Skretting Sustainability Report 2022

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健康と福祉

ロードマップ 2025の柱の一つは、薬剤耐性(AMR)に焦点をあてています。スクレッティングは、抗生物質の使用への依存を直接的に減らす新しい製品やサービスを革新することによって貢献したいと考えています。

このセクションでは、スクレッティングの事業との関連における抗生物質の使用状況を数字で示し、健康と福祉の領域に関わる難問とビジネスチャンスについて説明します。また、世界各地で行われている取り組みも紹介します。

私たちの目標と進捗

製品・サービスにおいて、抗生物質を予防的*に使用しない

Progress100.png進捗

不使用

* 当社の製品およびサービスにおいて、抗生物質を予防的に使用しないことを保証すること。薬用プレミックス/薬剤添加飼料の注文には、認可された専門家による有効な処方箋を添付する必要があります

製品・サービスにおいて、の成長促進のためのに抗生物質を使用しない

Progress100.png進捗

不使用

WHO**が「人間の健康にとって極めて重要」(CIA)と分類した抗生物質(CIA)を、当社の製品およびサービスに使用しない

ProgressLow.png進捗

2022年にスクレッティングが使用したCIA有効成分は2,000kg未満で、飼料販売総額の0.01%に相当。販売された飼料はすべて処方箋に基づく

** 「ヒト医療において重要な抗菌性物質」第6回改訂版に掲載”

薬剤耐性(AMR)

スクレッティングのグローバルサステナビリティ戦略の一環として、薬剤耐性(AMR)に関連するリスクに対処することが長年の目標となっています。これには、水産養殖のバリューチェーンにおける抗生物質の使用削減の支援や、特定の抗生物質グループ、特にWHOによって「極めて重要な抗菌性物質(CIA)」としてリストアップされた抗生物質の排除が含まれます。

私たちは、動物の健康に対する全体的なアプローチ、つまり養殖のベストプラクティスを通じて予防策を講じるほうが、治療法を提供するよりもはるかに適切であると信じています。私たちの目標は、生産者の抗生物質使用への依存を直接的に減らす革新的な製品とサービスの開発を通じて、AMRへの取り組みを業界全体で成し遂げることです。お客様とのパートナーシップを通じて、抗生物質を使用せざるを得なくなる主な問題に焦点を当てることで、これを実現しています。

また、チリのサケリケッチア敗血症(SRS)、南ヨーロッパのフォトバクテリア症やラクトコッカス症など、これまでワクチン接種ではコントロールが難しく、業界で抗生物質の使用率が高い原因となっていた疾病を軽減するための強固なソリューションを提供することに力を入れています。

飼料は持続可能で予防的な健康管理において重要な要素であるため、スクレッティングは疾病管理に貢献する革新的な栄養ソリューションなど、水生動物種のすべての養殖サイクルに最適な栄養を提供します。

統合的かつ全体的なアプローチには、最善の管理方法と飼育方法、継続的な監視と早期の段階での正確な診断、生産現場でのバイオセキュリティと消毒手順の実施、体系的なワクチン接種、治療が必要な場合の医薬品の責任ある利用も含まれます。

薬剤耐性(AMR)のリスクに対処するためのアプローチは、この数年間変わっていません。業界の主要な問題に焦点を当て、顧客やその他のパートナーとともに、養殖業における抗生物質使用への依存を直接的に減らすような新製品やサービスの開発でイノベーションを起こすことを目的としています。

Whiteleg shrimp tail

国ごとの抗生物質使用量の開示

動物には病気になったときに治療を受ける権利があります。養殖魚やエビに抗生物質を投与する方法としては、薬用飼料が望ましいとされています。スクレッティングでは、獣医師の処方箋がある場合のみ、薬用飼料を提供しています。水生動物用として登録されている抗生物質は比較的少なく、どの抗生物質を使用するかは選べません。しかし、当社は医療専門家のネットワークを持っており、技術チームを通じてお客様と緊密に連携して知識を共有し、代替治療やワクチンについて議論しています。

場合によっては、特定の疾病を治療するために、CIAが唯一の抗生物質であることもあります。抗生物質を含む飼料の生産を中止することもできますが、そうすることで、例えば生産者が漁場内で飼料に薬を添加するなど、抗生物質の使用を生産チェーンのさらに下流に押しやってしまう危険性があります。これらの方法は、薬剤耐性との闘いにおいて、より大きな課題をもたらす可能性があります。一方で当社が施設で抗生物質を添加する際には、作業者が保護される安全で管理された環境で、最終的な投与量を調整したうえで、高い品質基準で生産が行われています。

2022年は2021年と比較して、抗生物質を含む薬用飼料とCIAを含む薬用飼料の販売量の割合が減少しました。当社のグローバルビジネス全体では、CIAが処方され飼料に添加された量は2,000キログラム未満となり、28%の削減となりました。その他の抗生物質については、有効成分の含有量を35%削減しました。

2022年、私たちは2021年と比較して、抗生物質を含む薬用飼料とCIAを含む薬用飼料の販売量の割合が減少したことを記録しました。

2022年には事業全体で販売する抗生物質含有製品のリアルタイムな概要の構築を開始しました。これがあることで、より迅速な対応が可能になり、地理的地域による違いを把握し、世界中の同業者をつないで互いに学び合うことができます。

全般的に、養殖業は何十年も前から抗生物質の使用量を減らしてきています。当然、その年の病気の発生状況によって抗生物質の使用量には差があります。夏の高温と水不足という厳しい状況下でも、生産者はより優れた養殖方法で抗生物質の使用を抑えて生産を行っています。

2021年・2022年に抗生物質が処方された飼料全体の割合
2021年・2022年に抗生物質が処方された飼料全体の割合
飼料生産量に占める国別の抗生物質使用量の割合
**チリで抗生物質が多く使用されている主な理由は、サケリケッチア敗血症(SRS)の課題に対処するうえで、従来のワクチンや治療法がこの特定の細菌性疾患に対処する上で非効率であることが判明したため、Salmonid rickettsial septicaemia(SRS)の課題に取り組むためです。報告書の発表に先立ち、チリの当局(Sernapesca)が提供した最新の数字では、2022年上半期に海水で使用された抗菌剤性物質の95%がSRSのためせいであることが明らかになりました。

ソリューションとイニシアチプ

ARMOR- 肌の健康を考える

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スクレッティングノルウェーは、ノルウェー北部に位置する養殖顧客であるノードラクス社と共同で、機能性飼料「ARMOR」の試験を行いました。その結果、ARMORを給餌した魚は、皮膚へのダメージが著しく少なく、へい死率も50%減少しました。

ノルウェーの生産者は数年に渡って、冬の季節に魚の体表の傷や健康状態の低下という大きな問題に直面してきました。スクレッティングノルウェーは、魚の皮膚と飼料成分に関する新たに確立された知識に基づいて、この課題に取り組みました。

「私たちは、他の多くの生産者と同様、海面期にあるサケが冬によく見られるまたは特殊な疾病にかかる経験をしており、これがサーモンの福祉の低下やへい死率の主な原因となっています。そのため、ARMORを試してみようと思いました。」と、ノードラクス社の魚類健康生物学者であるCamilla Robertsen氏は述べています。

Bafador - 現代産業における古い技術


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ストレスの多い状況にさらされると、問題を引き起こす可能性のある細菌は、魚やエビの養殖環境に自然に存在しています。ストレス要因には、温度、季節の変動、養殖方法の変更などがあります。これらの事象によって日和見菌が発生し、問題を引き起こす可能性があります。

2022年、スクレッティングとProteon社は、インドで新しい飼料添加物の開発に取り組みました。この飼料添加物には、特定の細菌を標的にするための、ファージと呼ばれる自然界に存在する微生物が含まれています。本製品は、エロモナス菌やシュードモナス菌が引き起こす問題に対処できるよう、魚類をサポートすることができます。自然の健康法を適用することで、抗生物質への依存を減らし、将来の課題に対して望ましい効果を発揮することができます。


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セルマック と スクレッティング がチリの抗生物質使用量削減に取り組む

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チリは世界第2位の養殖サケの生産国であり、この分野では歴史的にSRSを抑制するために、フロルフェニコール(FFC)を中心に、海洋段階で比較的多量の抗菌性物質が使用されてきました。

スクレッティングは、セルマックと共同で、チリ産サケの養殖において抗生物質の使用を削減する実行可能な方法を確立するために、新しい共同プロジェクトに取り組んでいます。この業界パートナーシップは、対SRSにFFCを使用する治療計画を、薬の量や治療期間などの観点から最適化する方法を検討しています。この取り組みの目的は、不必要に高用量のFFCを投与することを避けることです。

このプロジェクトは、両社のFFC薬理学に関する知識と、SRS分野における独自の経験を生かすことを目的としています。

治療に関わるその他のベストプラクティスの導入と合わせて、この共同での取り組みがセルマックの対SRSの包括的な戦略の一部となることを期待しています。

現在、アトランティックサーモンを対象に、FFCの投与量を変えることや特別な薬用飼料などの飼料を活用した治療の実験の評価を行っています。

さらに、この緊密な協力関係を、テナシバキュラム属細菌をはじめとする他の疾病の課題の取り組みにも活用する選択肢について議論が始まっています。

「チリのサーモン産業の持続可能性を確保するうえで、抗生物質の削減はセルマック チリの魚病対策戦略における重要な要素です。この目標を支えてくれる飼料メーカーの取り組みに心から感謝しています」とセルマック チリのテクニカルマネジャーBerta Contreras氏は述べています。

養殖エビのリンの量に関する厳密な要件への対応

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リンは、食用作物の生産、肥料の主成分として、また動物栄養学上、最も重要なミネラルの一つです。すべての脊椎動物は、骨や歯の形成、細胞の成長、維持、修復に必要なタンパク質を作るために、リンを基本的に必要とします。そのため、養殖魚やエビには、成長と健康を維持するために十分な量の無機リンを供給する必要があります。

同時に、過剰なリンが環境や生態系にダメージを与えるリスクを最小限に抑えるために、必要量を超えないことが重要です。例えば養殖業において、特に水の交換が制限されるエビの養殖池では、リンの過剰供給は水の富栄養化や有害な藻類の発生につながります。

さらに、世界の食物連鎖の中で、無機リンの90%が農作物の肥料として使用されていると推定されるため、養殖など他の用途に利用できる量は限られています。したがって、地球を養うのに十分な栄養価の高い食糧を持続的に生産するためには、この貴重な資源をできるだけ効率よく、責任を持って使用する必要があります。

スクレッティングは、エビの養殖と飼料の分野でこの目標に確実に貢献するために、エビ類の成長速度と健康を維持するために必要なリンの要求量をライフステージごとに正確に把握することと、そのために必要な原料をどのように利用すればよいかについて、研究開発を行いました。

スクレッティングは、4年以上にわたって実施されたこのプログラムを通じて、業界トップのエビ用EP飼料の品質を保ちつつ、無機リンの使用量を37%削減できることを突き止めました。その結果、お客様の養殖場へのリン投入量を削減できるようになりました。

フィターゼはがサケのリンと亜鉛の取り込みを改善する

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サケの成長にはリンが必要ですが、スクレッティングはエビに必要とされるリンの量を最適化しただけでなく、サケの飼料に含まれる他の供給源から利用可能なリンを最大限に活用し、効率を高める新しい方法を明らかにしました。

フィターゼは、フィチン酸に結合されたリンを切り離すことができる酵素で、そのままだと単胃動物は消化することができません。飼料に添加することで、植物に結合されているリンの大部分を利用できるようになります。

「フィターゼを飼料に添加することで、牛の反芻胃でバクテリアが行っていることを模倣しているのです。」「サケが必要とするリンの多くを植物性原料から得ることができれば、リンの添加量を減らし、限りある資源に対する需要を緩和することができます」と、スクレッティング ノルウェーの閉鎖式養殖システム担当プロダクトマネジャーMarcus Søylandは言います。

飼料に含まれるリンの添加量が少ないということは、環境へのリンの放出が少ないということでもあります。さらにプラスの要素として、フィチン酸が分解されると亜鉛も吸収されやすくなります。亜鉛は傷の治癒に重要な役割を果たし、皮膚の健康はますます重要な課題となっています。フィターゼは淡水トラウとの飼料にすでに使用されており、今後サケマスの飼料にも添加される予定です。

スクレッティングAIグアヤス研究ステーション - エビ養殖を持続可能な食糧料生産の最前線に導く


Guayas graphic.png2022年、エビ養殖業界がより持続可能で革新的な飼料をいち早く導入することを目指し、スクレッティング アクアカルチャーイノベーション(AI)は、エクアドルのグアヤキルにグアヤス研究ステーションを開設しました。

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610万ユーロをかけて新設したこの施設は、エビの養殖に特化したワールドクラスの研究開発ステーションです。スクレッティングはエビの栄養と健康に関する知識をさらに深め、この知見を世界的な水産業界で最も重要なエビの生産地域の現場で実践するための理想的な基盤を築きます。

最新の技術を導入したこのステーションは、設備の整った実験室と最新の実験ユニットで構成され、バナメイエビ(Litopenaeus vannamei)に関わる重要な試験を実施します。さらに、商用生産環境を模倣した条件で複数の研究を実施するための水槽も備えています。

スクレッティングAIグアヤス研究所は、幼生から収穫サイズまでのエビ生産の全段階を研究します。シミュレーションと評価には、成長と飼料効率だけでなく、健康と福祉のパラメーターも含まれます。また、新規・既存の飼料原料の消化率や栄養バランスも重要なテーマです。この目的のために、高度なバイオテクノロジーが導入され、さらに開発される予定です。

新ステーションは、スクレッティングの科学専門家のグローバルネットワークと                             包括的なグローバルリサーチユニットの手厚いサポートを受けることができます。                           スクレッティングAIグアヤス研究ステーションは、エビがより速く大きく成                           長し、病気や環境問題に対してより強くなるための方法をより深く理解することで、                               これらの重要な知見を業界の実用的なソリューションに変えるイノベーション                              を生み出すことに努めます。

新施設の開所にあたり、スクレッティングのイノベーション ディレクターであるAlex Obachは、「スクレッティングAIグアヤス研究ステーションが開業したことを大変嬉しく思っています。この世界トップクラスの施設は、エクアドル および世界のエビ市場に対する当社のコミットメントを明確にするものです。地元の養殖生産者とより緊密に連携するだけでなく、養殖のパフォーマンスと効率を向上させる新しいソリューションを提供するためのパイプラインを確立することで、世界中のエビ生産者が世界の食糧と栄養の安全保障にますます貢献できるようになるでしょう」と述べています。                                



Next: 気候と循環

ロードマップ2025のこの柱は、主に温室効果ガス(GHG)の排出量を削減することに焦点を当てています。そのために、科学的根拠に基づいた目標を設定し、エネルギー効率化プログラムや、ライフサイクルアセスメント(LCA)の手法を取り入れた持続可能な原料調達、新しい原料の活用などを通じて、排出量の削減を目指します。

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